『オリジン』*光の一点

読んだことがあるユーザーさんも多いと思いますが、ダン・ブラウンの『オリジン』で印象に残ったことを書きます。
『オリジン』は、宗教、歴史、芸術、テクノロジーが交錯する本で、映画を観るように楽しめる作品ですよね。

ネタバレしない程度にとどめて概要を書きます。
上巻・中巻は、実在する建物が描かれリアリティあふれるスペインを舞台に、未来学者の人類の起源と未来に関するプレゼンを巡るサスペンスアクションが描かれています。
下巻は、人類の起源と行き着く先についてシミュレーションされた未来学者のプレゼン内容の公開という三巻からなる小説です。

テクノロジーに興味があるので、主に下巻で印象に残ったことを書きます。
未来学者が、科学的根拠に基づいて量子コンピューターを駆使して、「生命の起源」と「人類がどこへ行くのか」という壮大なシミュレーションをします。
「起源」について、化石記録に基づいた年表では、原始人、キツネザル……ウナギ、魚、軟体動物、プランクトン……細菌、海に潜って単細胞生物となりそこで終わります。

「ここでわれわれの逆行映画はフィルム切れとなります。最古の生命体が、どうやって生命のない化学物質の海から出現したのかはわかりません。この物質の最初のひとコマは、見ることが不可能なのです」

1人の物理学者が研究する「量子生物学」では、「神無き起源(オリジン)」を説いています。
エネルギーをよりよく分散させるために、物質が自ら秩序を作り出したこと、すなわち、生命はエントロピーの必然的な産物であり、生命は単に世界がエネルギー散逸のために作り出して繁殖させたものであると書かれています。
仮想タイムマシーンであるコンピューター・シミュレーションで、宇宙のオペレーションシステムに「エネルギー拡散」のコマンドを打ち込みます。すると数億年後にDNAが出現する描写がありました。

オリジン 下 (角川文庫) – 2019/3/23

生命の誕生の仮定は「量子生物学」で説明できるかもしれませんが、更に想像が広がりました。
エントロピー散逸で生命を誕生させる場となった「原初の海」そのものはどうしてできたのか、地球の起源は?もっと言うと、宇宙の起源である光の一点はなぜ、どうやってできたのか?光の一点のその瞬間そのものは……。

シミュレーション仮説などあり、まだまだ「その瞬間」に対する探求は続くのだろうと思います。



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